賃貸中のマンション、いわゆるオーナーチェンジ物件(以下、「OC物件」と記載します)の売却は、自己居住用マンションの売却と大きく異なります。
OC物件の売却を成功させるためには、自己居住用マンションとの違いを理解して、OC物件の売却に適した不動産会社を選ぶことが必要です。
ここでは、OC物件と自己居住用マンションの違い、不動産会社の選び方をご説明します。
OC物件と自己居住用物件の違い
コンパクトマンションに代表されるOC物件は、自分が住むためではなく、賃貸して資産運用をするためのマンションです。所有者が自分で住む自己居住用マンションとは広さや仕様が異なることが多く、購入者が物件を検討するポイントも全く違います。
また、購入者だけでなく、仲介会社や金融機関の考え方や動き方も自己居住用マンションの売却とは異なります。
OC物件を上手に売却するためには、以下のポイントをしっかり把握して対応する必要があります。
- 物件の探し方の違い
- 購入検討のポイントの違い
- 仲介会社の対応の違い
- 金融機関の違い
それでは、これらの点をもう少し細かく見ていきましょう。
1. 物件の探し方の違い
自己居住マンションを探している人は、SUUMOなどの不動産サイトで物件を探すことが多いでしょう。また、チラシなどで物件をチェックしていることもあります。
しかし、OC物件では、どちらも頼りにできません。
例えばSUUMOには、賃貸中の物件は掲載されません。自己居住用マンションとOC物件が混在すると、物件を探しにくくなるため、OC物件は掲載できないようになっています。
また、チラシはその物件がある地域内で配布されますが、OC物件の購入検討者は、自宅の近くに限定して物件を探している訳ではないので、チラシを重視していません。
OC物件の購入検討者の多くは、投資用物件を専門的に扱っている投資用不動産サイトで物件を探していますから、そちらのサイトに情報掲載する必要があります。
2. 購入検討のポイントの違い
自己居住用マンションを探している人は、自分の通勤のしやすさのほか、住環境や防災・防犯等の安全性、教育環境などを中心に物件を検討します。
OC物件を探している人は、利回り(収益性)、賃貸のしやすさ(立地・家賃)、ランニングコスト、融資の受けやすさなどを中心に物件を検討します。
このように自己居住用と投資用では、それぞれの検討者の知りたいポイント、重視するポイントが異なりますから、その点を踏まえて販売活動を行う必要があります。
3. 仲介会社の対応の違い
自己居住用マンションの売買は、大手不動産仲介会社の取扱いが多いですが、OC物件は、大手不動産仲介会社はあまり積極的に取り扱っていません。
これは、OC物件は自己居住用マンションよりも面積の小さい物件が多いので、価格が低く、仲介手数料も少ないことが理由です。また、主に取り扱っている自己居住用マンションと特性が大きく異なるので、ノウハウ不足から販売が苦戦しやすいことも理由の一つでしょう。
通常、不動産会社の担当者は営業エリアをもって活動しています。営業エリアの中で購入見込客を増やし、エリア内の新しい物件を日々チェックして物件紹介を行います。しかし、OC物件の検討者は、自己居住用マンションの検討者よりも広いエリアで物件を探すため、同じ方法では対応できません。
不動産会社は、より高額な取引になる自己居住用マンションの売り手・買い手を重視するので、結果的に、地域密着型の不動産会社では、OC物件の売り手・買い手の対応は後回しになる傾向があります。
4. 金融機関の違い
自己居住用マンションの購入には住宅ローンが利用されます。金利低下のため競争が厳しくなっていますが、金利や融資の審査基準などはほぼ横並びで、大手都銀やネット銀行による寡占化が進んでいます。また、借り手にとっては非常に融資を受けやすい状況が続いています。
一方で、OC物件購入への融資は、住宅ローンよりもリスクが高いと考えられていて、融資の難易度が住宅ローンよりも高く、融資が下りずに売買が成立しない、ということもあります。
銀行によって融資姿勢が大きく異なり、金利や審査基準も同じく異なっています。大手都銀やネット銀行は全般的に消極的なので、こちらは地銀や信用金庫などが中心になります。また、同じ銀行でも時期によって融資姿勢が大きく異なることがあります。
OC物件売却の不動産会社の選び方
通常、OC物件の売却は、不動産会社にその業務を依頼します。
不動産会社は、売主様に代わって売却の実務を進める役割を担います。したがって、マンション売却を成功させるための最も重要な要素は、信頼できる不動産会社選びです。
売却を成功させるために売主様自身に必要な知識もありますが、売主様は不動産を本業としている訳ではないので、全てのことを理解・把握するのは、現実的には困難です。
つまり、売却を依頼する不動産会社は、単に売主様の手足となるだけでなく、売主様にアドバイスをして助けるパートナーでなくてはなりません。
不動産会社の種類と選び方
マンションの売却を仕事にしている不動産会社はたくさんあります。大手の会社・地元の会社・専門の会社、種類も複数あります。
では、どの会社に売却を依頼するのが良いのでしょうか?
OC物件と自己居住用マンションでは、上手に売るために必要な機能が全く違います。
例えば、駅前にお店を構えている地域密着型の不動産会社は、そのエリアの中で顧客を見つけることに特化した業態です。取り扱うのは主に自己居住用の不動産で、広告や営業手法もそれに合った形になっています。
したがって、OC物件の売却には、OC物件の売却に合った不動産会社を選ぶ必要があります。
以下、どのように会社を選べばよいのかを、会社の特徴と合わせてご説明します。
1. 大手不動産会社の特徴
財閥系などの大手不動産会社は、販売体制や営業担当者の質の点で、他の不動産会社よりも優れていて、平均的な安心感や安定感は最も高いと言えます。
ただ、自己居住用不動産を中心に業務を行っており、会社が大きいだけに柔軟な対応が難しいこともあって、OC物件の売却はあまり得意ではないことが多いようです。
以下、こちらについて少し詳しく解説します。
① OC物件を軽視しやすい
大手不動産会社は、立派な店舗・しっかりした社内体制・充実した広告・質の高い営業担当者を備えています。それだけコストもかかっているため、単価の高い仕事、つまり価格帯の高い不動産の取扱いに集中しなければ、必要な利益を上げることができません。
大手不動産仲介会社の営業担当者あたりの獲得手数料ノルマは月250~300万円程と高額ですが、大きな不況時でなければ多くの担当者がその目標を達成します。
OC物件は、一般的に面積が小さいので物件価格も低く、また両手取引も難しいため、自己居住用マンションよりも仲介手数料が少なくなります。
営業担当者には、自分の営業ノルマを達成しなければいけない強いプレッシャーがありますから、OC物件を軽視しやすく、対応を後回しにする傾向があります。
② 業務が自己居住用中心に作られている
大手不動産会社では、自己居住用不動産を中心に扱っています。(収益物件を専門に扱う部署もありますが、そちらは一棟物件が中心です。)
OC物件は、適切な広告の仕方、買い手の探し方、物件の調査の仕方や売買契約の条文も自己居住用マンションとは異なります。
例えば、自己居住用の不動産では、売り手も買い手も、基本的にそのエリアに住んでいます。つまり、エリアに密着した営業活動が効果的です。しかし、OC物件では、地域密着の営業はあまり効果がありません。
そのため、社内の仕組み上、OC物件に適した対応がとれないことが多くあります。また、制度上は可能な場合でも社内手続が大変で、営業担当者が対応できないこともあります。
もちろん優れた対応ができる担当者もたくさんいますから、そのような担当者に心当たりがあれば、有力な依頼先の候補になります。一方、大手だから大丈夫なはず、と安易に考えてしまうと、売却の成功が難しくなります。
2. 中小の地域密着不動産会社の特徴
中小の地域密着不動産会社は、会社によって取り扱っている業務の内容が大きく異なっています。
賃貸仲介や賃貸管理を行っていることが多く、OC物件の売却についてもしっかりした知識・経験がある会社もありますし、逆に売買を苦手にしている会社もあります。
また、大手不動産会社のように採用や教育体制が整っていないので、経験豊富で能力が高い人もいれば、その逆の人もいるなど、担当者の能力にも大きなばらつきがあります。
このように、中小の地域密着不動産会社は、会社や担当者によって業務の適性が大きく異なります。その中で、OC物件の売却に向いているのは、以下の条件を満たす会社です。
① 会社としてOC物件の売却に取り組んでいる
例えば、店先に賃貸物件のチラシだけが掲示されている場合、その会社は賃貸仲介を中心に取り扱っていて、あまり売買の知識や経験が無いと考えられます。
また、売買を中心にしている会社も、自己居住用が主で、OC物件には詳しくないことが多いので、会社としてOC物件の売却に取り組んでいるかを確認すると良いでしょう。
② 営業担当者の経験・能力が高い
売却を成功させるには、担当者に十分な経験と能力が必要です。人柄の良さも大事ですが、自分の物件を担当する担当者を、まずは経験と能力で評価してみて下さい。
この2点を満たした会社・担当者であれば、安心して売却を依頼できるでしょう。
3. OC物件専門会社の特徴
東京など大都市には、OC物件の売買を専門にしている不動産会社もあります。これらの会社は、OC物件の売買に特化しているので、そのための機能は他の不動産会社より高いと言えます。
しかし、モラルの低い信頼できない会社もあるため、その選別が重要です。
大手不動産会社は自社のブランドを大事にしていますし、中小の地域密着不動産会社は地元での信用を大事にしています。ブランドや信用に傷がついては、今後のビジネスが難しくなるため、ブランドや信用を傷つけるような仕事はできません。
一方、OC物件の専門業者は、ブランドも地元の信用も特に関係ないため、レベルが低い会社や、悪徳商法を営む会社でも淘汰されにくいのです。
会社の実態を外から把握することは困難ですが、ごく簡単な見分け方もあります。それは、営業姿勢と営業担当者の質を見ることです。
強引な営業活動を行ったり、外面を過剰に立派にしている会社には注意が必要です。また、営業担当者の質にも注意してください。
<注意が必要な営業姿勢>
- 連絡先を教えていないのに電話をかけてきた(※不適切な方法での個人情報取得)
- 断っても、しつこく営業をしてくる
- 絶対儲かる、相場より高く売れる、という話をする
- オフィスや調度品が不相応に立派
<営業担当者の質>
- 話の内容が表面的で、論理的でない
- 高価な時計・服装が華美・髪や肌の色
- 質問に対して、その場しのぎの回答をする
まとめ
このように会社毎の特徴があり、また担当者の能力による部分も非常に大きいと言えます。
したがって、以下のポイントで依頼する会社を選ぶのが良いでしょう。
- 会社が、OC物件売却に対応できる仕組みになっている
- 担当者が、OC物件の売却について十分理解している
- 担当者のモラルが高い(売主のために仕事をしてくれる)